■ 特注ヘッドガスケット
report: 2006/08/21
update: 2016/02/05
update: 2016/02/05
BBS にオーバーヒートでヘッドガスケットを抜いてしまった方の書き込みがありましたが、案の定、既にヘッドガスケットはゴソウダン部品で入手不能とのこと。まぁ、"ヘッドガスケットだけ" があってもエンジンの O/H が出来るわけではないのですが、でも、ヘッドガスケットが無いことには手も足も出ませんよね?で、何とかならないものかとガスケットメーカーさんに特注製作の相談をしてみたところ、コスト度外視(^^;)で良ければ 1 枚でも製作してくれるとのことでした〜! ...でも度外視できないですよね ^^;
そこで oga-EG では BBS で希望者を募り、コスト度内視(?)でガスケットの特注製作にトライしてみました!
写真が小さいですが(^^;)、左が TURBO 車用の純正ガスケット。右が N/A 車用の純正ガスケット。中央が今回製作した N/A/TURBO 車共用の特注ガスケットです。
厚さ(1.2t)や外形、穴の位置や形状などは TURBO 用も N/A 用も全く同じです。
異なっているのはこのボアリングの材質とボアリング接続部分の形状です。
N/A 用は材質が通常のスチールです。2 個のボアリングがメガネ状に繋がっているのは生産性向上のためだそうです。
TURBO 用は材質は N/A 用と同じですが、表面にモリブデンコートがされていて、締め付け時にすべりを良くしてガスケットへのダメージを減らすよう考慮されています。また、ボアリングの接続部のブリッジは、ブリッジの中をくり抜くことによってボア周辺部への面圧が低下しないように配慮されています。この辺は TURBO による燃焼圧力の増大への対応だと思われます。
N/A 用と TURBO 用を比べると TURBO 用が完全に N/A 用の上位互換になっているのがわかります。今回製作したヘッドガスケットはボアリングに TURBO 用と同じモリブデンコートを行い、リング形状はボア周辺の面圧確保に理想的な円形の独立型とし、N/A/TURBO 共用で使える仕様としました。
これは純正の TURBO 車用のボアリングの部分ですが、よく見ると矢印の部分が真円から少し外側に歪んでいるのが判ります(N/A 用も同様)。
現物でもよく見ないと判らないのですが、実はこれはバルブの逃げ加工だそうです。今回、この逃げ加工を行うとそれ専用の型を起こさなければならず、コスト的に実現不可能になってしまうため、ボアを純正ガスケットの 67φ から 68φ へと拡大して対処しました。ガスケットメーカーさんの説明によると、チューニングメーカーのガスケットなどでも、コストを抑えるためにこのように対処しているとのことでした。
厳密に言うと圧縮比が下がることになりますが、気になる方は、どの程度下がるか計算してみてください。基本的には誤差範囲だとご理解いただけると思います ^^;
...と、ヘッドガスケットはガスケットメーカーさんに標準で 68φ のボアリングが有ったために話は順調だったのですが、同時に製作しようとしたマニホールドガスケットでは、インテークポート用のリングに合うものがガスケットメーカーさんに無く、これを特注で製作すると今回程度の発注量では現実的な価格にならないため、取り外した中古のガスケットを補強するための銅板を製作してみました!
これは、少し前にヘッドガスケットは手に入ったものの、マニホールドガスケットが手に入らなかったためにこの手でエンジンを OH してもらった方がいたのと、カブの部品取り車を持っている方に実際に外してみていただいたところ、特にヘッドやマニホールドとガスケットの固着もなく、マニホールドを外したら自重でガスケットがポロッと落ちてきたとの情報があったために実行しました。
僕が過去にバラしたことがある数台のエンジンでも、マニホールドガスケットを外した時の感じはそんな印象だったのでたぶん問題ないと思いますが、個体の状況によっては外したガスケットが再使用に耐えられないことも考えられますので、実際に行われる場合は自己責任でお願いします。
こちらは N/A 車用です。
下が純正のマニホールドガスケット。上が今回製作した補強用銅板です。銅板の厚さは 0.2mm です。
ちなみに下の 4 個の大きめの穴がエキゾーストポート。その上の 4 個の大きめの穴が主燃焼室用のインテークポート。主燃焼室用の 45°上にある穴が副燃焼室用のインテークポートです。
8 個のインテークポート用の穴には、面圧を上げて気密性を確保するためにリングが装着されています。
こちらは TURBO 車用です。
TURBO 車用はインテークの形状が洋ナシ形になっています。多分これはインジェークターから噴射される燃料の関係だと思われます。また、エキゾーストポートも大型化されており、TURBO 用に容量アップされていることがわかります。
このようにマニホールドガスケットは N/A 用と TURBO 用で形状が異なるためにそれぞれ抜き型を起こす必要があり、ヘッドガスケットのように共通化してコストダウンすることが出来ませんでした。
マニホールドガスケット用の補強銅板の使用方法です。
装着時はこのように表面を清掃した中古のガスケットの両面を銅板で挟んで使用します。片面だけに銅板を当てたり、銅板だけで使用すると気密性が確保できませんのでご注意ください。
さて、この特注ガスケットですが、今回 BBS で購入希望者を募集したところ、35 名の方から下記の枚数のオーダーが入り、型費や諸経費を含めて算出した領布単価がこのようになりました。
製品名 | 受注数 | 単価 (税込み) |
---|---|---|
ヘッドガスケット (N/A / TURBO 共用) | 53 枚 | 4,900 円 / 枚 |
N/A マニホールド用銅板 | 19 セット (1 セット = 2 枚) | 3,500 円 / セット |
TURBO マニホールド用銅板 | 16 セット (1 セット = 2 枚) | 3,900 円 / セット |
ちなみに、ガスケットメーカーさんでの型の保管期限が 3 年とのことでしたので、型は oga-EG で引き取って保管してありますのでご安心ください ^^)
Special thanks:
・TURBO 用のガスケットサンプル、ありがとうございました! > 長田さん
・マニホールドガスケット用銅板のアイデア、ありがとうございました! > メトロさん
・カブのマニホールドガスケットの確認、ありがとうございました! > 大ちゃん
・撮影用のガスケットの借用、ありがとうございました! > 伝説さん
・長い間お待たせしたのに、ご理解いただきありがとうございました!!! > ご注文いただいた皆様
2016/02/05 追記
追加生産の依頼が入った為、ガスケットメーカーさんに再見積もりをお願いしたところ、
・再生産は可能。
・但し、ボアリングのモリブデンコーティングは、業者が廃業したため出来ない。
とのことでした。